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Web版 教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」 第5回

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議決責任など

1 議決責任の意味

 近頃、議会でよく耳にするのが「議決責任」です。ただ、法律上の言葉ではありません。もっというと、議会用語でもありません。その証拠に、この「議決責任」という言葉が国会でどの程度使われているか国会会議録検索で検索してみると、1件しかヒットしません。その1件も、逢坂誠二衆議院議員が使っている1件だけです(平成19年3月1日衆議院予算委員会第三分科会)。逢坂議員は首長経験者(元北海道ニセコ町長)であり、発言も自治体議会についてのものです。

 議決責任という言葉は自治体議会の業界用語ともいえるわけですが、その使われ方は一様ではありません。ただ、議会基本条例で使われる場合、共通するのは、個々の議員ではなく議会総体としての責任としているところです。表決責任ではなく議決責任というところに、その意味が読み取れます。また、説明責任という用語より広い意味で使われているように感じます。単にどのような議決をしたかを説明するのではなく、議決の背後にあるものも含めての責任とするイメージです。

 「意思決定に当たって十分な調査研究をし、審議すべき責任」という意味で使われているように読める条例もあります。この場合には、しっかり議決責任を果たすためには、議会での「審議の充実」が必要となります。次の山陽小野田市議会基本条例はそうした意味で使われている例です。こうした考え方からは、「議員間における討議」、「議論すべき論点の洗い出し」などの重要性などが導かれます。


〇山陽小野田市議会基本条例

(審議における論点情報の形成)

第18

委員会は、提案される重要な政策、施策、計画等(以下「政策等」といいます。)について、議会審議における論点に係る情報を形成し、議論の水準を高めるとともに、議決責任を担保するため、提案者に対し、次の各号に掲げる事項について明らかにするよう求めます。

⑴政策等の提案に至った経緯、理由及び期待される効果

⑵他の自治体の類似する政策等との比較検討

⑶提案に至る過程における市民参加の実施の有無とその内容

⑷ 総合計画との整合性

⑸ 関係法令及び条例等

⑹ 財源措置及び将来にわたるコスト計算


 また、「議会での議論や議決に至る過程を住民に説明すべき責任」という意味で使われている場合もあります。「議会の公開性を高めること」、「各議員の議案に対する賛否の公表」などがここから導かれます。兵庫県議会基本条例の場合がそうでしょうか。


〇兵庫県議会基本条例

(議会の運営原則)

第5条1〜3略

4 議会は、議決責任を深く認識し、県民に開かれた透明性の高い運営に努めなければならない。


 次の会津若松市議会基本条例の場合には、しっかり調査研究し、審議したことを議決結果とともに住民に伝えるということになるのですから、ほとんど「議事機関としての議会の責任」という意味になるように思えます。


〇会津若松市議会基本条例

(議決責任等)

第8条 議会は、議決責任を深く認識するとともに、議案等を議決し、自治体としての意思決定又は政策決定をしたときは、市民に対して説明する責務を有する。

2 議会は、議会運営に関し、市民に対して説明する責務を有する。


 意地悪な言い方をすれば、議決責任という言葉は、意味が不明確である分、いろいろな意味を含めることができるマジックワードです。しかも、「責任」という強い表現であるため、たいへん「都合のいい」言葉として使われているのではないかと思うのです。「議決責任とは何か」ということを議論するより、議決責任という言葉を使って、議会のどのような役割の重要性を示そうとしているのか議論する方が大切であるといえるかもしれません。

詳細は地方議会人9月号で解説していきます。

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Web版教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」バックナンバー

連載第1回 議会基本条例をめぐる状況①
連載第2回 議会基本条例をめぐる状況②
連載第3回 住民とつながる①
連載第4回 住民とつながる②
連載第5回 議決責任など
連載第6回 一問一答方式の導入と反問権
連載第7回 行政監視から政策提案へ①
連載第8回 行政監視から政策提案へ②- 政務活動費を生かす
連載第9回   行政監視から政策提案へ③ 政務活動費を生かす2
連載第10回 行政監視から政策提案へ④
連載第11回 信頼できる議会を目指して①  議事機関としての議会
連載第12回 信頼できる議会を目指して②  住民とともに歩む議会
連載第13回 会議規則の整備①
連載第14回 会議規則の整備②
連載第15回 傍聴規則の整備

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