第6回 「地方創生アンケート調査から見る現状と課題 ─神奈川県の市町村を対象として」
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのか?」、また「地方創生を実践するガイド」という2つの視点を持ちます。
第1期の地方創生を振り返り、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントをもとに、読者の皆さんは本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
1.はじめに
今回は私が実施した地方創生に関するアンケート調査の結果を紹介します。
神奈川県内の33市町村を対象に、第1期地方創生の現状と課題を把握するため、アンケート調査を実施しましたⅰ。今回はアンケート調査の結果の一部を記します。本稿は、アンケート調査の結果を紹介することで、読者の所属する市町村が進める地方創生に何かしらのヒントを提供することを意図しています。今後、他県の市町村を対象にしたアンケート調査結果も言及します。
2.アンケート調査の趣旨
私は、神奈川県内の市町村における地方創生の現状と課題を把握するため、県内33市町村に対し、「地方自治体における地方創生の現状と課題に関するアンケート調査」を実施しました。33市町村から回答を得ました(100%の回答率)。
アンケート調査の目的は、神奈川県内の地方自治体が実施する地方創生の現状を把握し、地方創生の意義、効果、課題を明らかにすることです。なお、本アンケート調査は公益財団法人高橋産業経済研究財団の研究助成を活用していますⅱ。
本稿は、地方創生の概念や過去5年間の取組みを振り返り、アンケート調査の結果を記すことで、自治体が取り組む地方創生に示唆を与えることが目的です。
3.地方創生の現状と課題に関するアンケート調査結果
神奈川県の市町村を対象に実施した「地方自治体における地方創生の現状と課題に関するアンケート調査」は、大きく5テーマから成立しています。それは、
①地方創生の現状、②他主体との連携、③地方創生に関する人材育成、④国等への要望、地方創生の課題・展望、⑤その他
になります。設問数は35問あります。その中で、本稿は地方創生の現状等に絞り、回答結果を端的に記します。
地方創生の達成度
設問は「第1期地方版総合戦略の達成度を教えてください。1つに○をつけてください」です。回答結果は図1のとおりです。
地方創生が「80%以上の達成度」と回答したのは5団体(15・2%)となっています。多くの団体は道半ばという印象です。地方創生は2060年が目標年度であるため、第1期の5年間だけでは達成できないのかもしれません。
第1期と第2期の地方創生の重点分野
設問は「第1期地方版総合戦略の中で、力を入れている分野に3つまで◯をつけてください」と「第2期地方版総合戦略の中で、力を入れている分野に3つまで◯をつけてください」です。第1期と第2期を比較しています。回答結果は表のとおりです。表の上が第1期であり、下が第2期です。
第1期と第2期を比較すると、各分野を選択する傾向に変化は見られません。しかし第2期の選択数が減少しています。ここから地方創生がトーンダウンしていることが推察されます(MAが92から63へ減少しています)。
表の「その他」の回答を言及すると、第1期が安全安心なまちづくり、健康、中山間地域対策、マーケティング、プロモーション、女性活躍などがありました。第2期は安全安心なまちづくり、SDGs、中山間地域対策、雇用の創出、環境、関係人口などの回答となっています。
地方創生に関する予算
地方創生を進めるためには一定の費用(予算)がかかります。そこで予算を確認しました。設問は「地方創生に係る国の予算は、貴自治体が地方創生を推進するうえで十分な金額だと感じていますか。1つに◯をつけてください」です。回答結果は図2のとおりです。
21団体(63%)が「十分である」と回答し、12団体(37%)が「十分でない」と答えています。
ⅰ.本論文はアンケート調査の一部を単純集計した結果のみを提示します。同趣旨のアンケート調査を、岩手県、石川県、愛媛県の各市町村に対しても実施しています。別の機会に、それらの県内市町村と神奈川県内の市町村との比較分析を実施する予定です。今回は、先行的に神奈川県内の市町村だけに限定して紹介しています。
ⅱ.本アンケート調査は、相模原市市長公室総合政策部政策課との連名で実施しました(私と相模原市との共同調査という位置づけです)。