第1回 「第1期地方創生を振り返る3つの視点」
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのか?」、また「地方創生を実践するガイド」という2つの視点を持ちます。第1期の地方創生を振り返り、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントをもとに、読者の皆さんは本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
本連載の趣旨
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのだろうか」を念頭に、私の考えを記していきたいと思います。また、本連載は「地方創生を実践するガイド」という視点も持ちます。
今春から第2期地方創生がスタートしました。第2期の地方創生を確実に進めるために、第1期地方創生のチェック(C)と、そこから導き出されるアクション(A)を提示します。第1期の地方創生を振り返ることにより、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントを提供します。読者の皆さんは、本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
簡単に私の紹介をします。民間シンクタンク研究員、自治体職員、国の外郭団体のシンクタンク研究員を経て、今は大学に勤務しています。机上の学問ではなく、実践的な取組みをしてきたつもりです。大学の出校日以外は、毎日のように様々な自治体(議会を含む)に行き、現場の観点から政策づくりに取り組んできました(ただし、今年度は、新型コロナウイルス感染症のため現場に行けずにいます)。
本連載の内容は、私の実体験をもとに執筆しています。今回は第1期地方創生を振り返ります。多くの論点はありますが、今回は3点に限定して検討します。
地方創生の目標
本連載のテーマは「地方創生」です。読者の皆さんは、すでに理解していると思いますが、簡単に地方創生を振り返ります。
2014年9月、国に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置されました。そのために2014年を地方創生のスタート年と捉えることが多くあります。12月には「まち・ひと・しごと創生法」(通称「地方創生法」)が制定されました。その結果、国と自治体において地方創生が本格的に進むことになりました。
まち・ひと・しごと創生本部が設置された背景は、2014年5月に民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が発表した調査結果(「増田レポート」とも称されることがあります)が大きく影響しています。同レポートには「消滅可能性都市」が提起されています。全国の市区町村の半分にあたる896団体を名指しして「消滅する可能性がある」と主張しました。
なお、国が進めているのは地方創「生」であり、増田レポートを発表した団体は日本創「成」会議です。読み方は同じでも字が異なります。よく間違える人がいるため言及しておきます。
図表1は、地方創生法に明記されている目標です(第1条)。同法を確認すると、地方創生が意図しているのは12項目あります。読者の皆さんの自治体は、12項目のうち何項目を達成できたでしょうか。
国は、2014年に「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定しています。これらには数値目標があります。それは「2060年に1億人程度の人口を確保」です。この数字は2010年当時の人口(国勢調査)から17%減になります。毎年0・34%の人口減少に抑えることができれば、2060年に17%減を達成できます。しかし地方圏に位置する多くの自治体は、1年間の人口減少率を「0・34%減」に留めることはできていません(地方創生の成果などは、次回以降に取り上げます)。
現在、多くの自治体は地方創生法を法的根拠にして、地方創生の施策や事業を進めています。一般的に法律は北海道から沖縄までを想定するために、画一的であり、抽象的にもなります。また取組む施策や事業によっては、国(法律)と自治体に矛盾が生じます。自治体が自らの意思に基づいて地方創生を進める気概があるならば「条例化」も一案です。
現在、地方創生を意図している条例は約150あります。多くが附属機関設置の条例か、基金の条例になります。前者は「三芳町まち・ひと・しごと創生総合戦略審議会条例」になります。後者は「長浜市まち・ひと・しごと創生総合戦略推進基金条例」です。
地方創生を進めるための基本的な条例は、意外とありません。例えば、兵庫県の「兵庫県地域創生条例」や、養父市(兵庫県)の「まち・ひと・しごと・ふるさと養父市創生条例」くらいです。国からの押し付けではなく(「押し付け」と書くと語弊がありますが)、自治体が自発的に地方創生を進めるという意思があるならば、条例化に取り組んでもいいでしょう。
議会で執行部に条例化を求めてもよいでしょう。場合によっては、議会として取組み、地方創生の条例を議員提案することも考えられます。前向きに地方創生の条例を検討してはどうでしょうか(連絡いただければ後方支援をします)。
詳細は地方議会人6月号で解説していきます。