第13回 SDGsと地方自治体
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのか?」、また「地方創生を実践するガイド」という2つの視点を持ちます。
第1期の地方創生を振り返り、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントをもとに、読者の皆さんは本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
1.地方創生に加わった「SDGs」
国が発表した「第 期まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2019年12月20日)には、
「将来にわたって『活力ある地域社会』の実現と、『東京圏への一極集中』の是正を共に目指すため、第1期の成果と課題等を踏まえて、第1期『総合戦略』の政策体系を見直し、以下のとおり、次の四つの基本目標と二つの横断的な目標の下に取り組むこととする」
と明記されています。
同戦略が言う「次の四つの基本目標と二つの横断的な目標」は図表1 のとおりです。図表1の右側にある「横断的な目標」の一つに「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」があります。ここに「SDGs」という言葉があります。第2期地方創生にSDGsという概念が新しく加わりました。
今回は地方自治体におけるSDGsの動向に加え、地方創生を実現していくSDGsの視点考えます。
2.SDGsの概念
すでにSDGs(エス・ディー・ジーズ)を理解している読者は多いと思います。けれど、簡単にSDGsの概念を言及します。
国は「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置しています(2016年5月20日閣議決定) 。同本部は、本部長を内閣総理大臣とし、副本部長は内閣官房長官と外務大臣です。同本部を中心に、国はSDGsを強く推進してきました。その一つの取組みとして「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」にSDGsが書き込まれたと理解できます。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった略称です。Sustainable Development Goals は「持続可能な開発目標」と訳されます※1 。SDGsは日本が独自に決めたことではありません。世界全体の取組みです。
SDGsは2030年までの国際開発目標です。SDGsは17の目標と169のターゲットが設定されています。17の目標とは、目標1の「 貧困をなくそう」から目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」まであります(図表2)。これらの目標を達成することで、持続可能な世界を実現し、地球上の「誰一人として取り残さない」(No one will be leftbehind)を実現することを目指しています※2 。
【図表2】SDGsが掲げる17の目標(出典:国際連合広報センター)
SDGsは「誰一人として取り残さない」を理念としています。この理念は国連を主な舞台として世界全体で共通しています。日本は無視することはできませんし、日本だけで通用する目標や基準でもありません。国は世界全体に歩調をあわせ、積極的に推進しています。そのため地方自治体も、SDGsを政策(施策や事業を含む)に関連していかざるを得ない状況にあります。そして第2期地方創生にも、SDGsが深く関係することになりました。
【註】
※1 筆者が市民向けにSDGsを説明する時「Sustainable Development Goals」や「持続可能な開発目標」と話しても理解されません。そこで筆者は「す(S) ごい、で(D) かい、ゴ(Gs)ール」と伝えています。続いて市民には「SDGsの一つの目標は2030年に全世界から貧困をゼロにすることです。 貧困をゼロにすることはとても大きな目標です。だから、『すごい・でかい・ゴール』なのです」と説明すると、比較的、理解してくれます。個人的に思うことは、SDGsのような行政用語を、いかに市民に分かりやすく説明できるかが重要と考えています。
※2 2020年の秋ごろに、次の数字が発表となりました。それは、 自動車メーカーは654人、精密機器メーカーは950人、広告会社は6000人、旅行会社は6500人…。この数字は何だと思いますか。回答は、2021年3月までのリストラ(人員削減)の数字です。何れも数値目標を達成したとのことです。 一方で、これらの4社はSDGsを強く推進しています。SDGsの基本理念は「誰一人として取り残さない」です。ところが実際は、従業員を取り残しています(リストラしています)。民間企業は「倒産」がありますから、 背に腹はかえられないということと理解しています。この点で考えると、真にSDGsを実現していく主体となるのは、民間企業ではなく、 (民間企業のような倒産がない) 地方自治体であるような気がしています。
詳細は地方議会人7月号で解説していきます。