第5回 「地方創生は地域経済の活性化を達成できるのか?」
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのか?」、また「地方創生を実践するガイド」という2つの視点を持ちます。
第1期の地方創生を振り返り、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントをもとに、読者の皆さんは本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
1.これからの日本の地域経済は活性化できない?
地方創生における「地域経済の活性化」の目標は明確です。国は「戦後最大の経済・豊かさ」を目指すとして「国内総生産(GDP)600兆円の実現」を目標に掲げています。しかしながら、その目標は遠のいている感があります。
新型コロナウイルス感染症の影響により、4〜6月期の国内総生産(GDP)は、年率換算では28・1%のマイナスとなりました。過去最大の落ち込みとなっています。
帝国データバンクの発表によると、破産等の法的手続きをとって倒産した企業と、事業を停止して法的整理の準備に入った企業は、2月から9月8日までの累計で500社に達したとのことです。その多くが新型コロナウイルス感染症の影響を受けていると言われています。
このような状況では、日本の地域経済の活性化に暗雲が垂れ込めつつあるように感じます。しかし、筆者は新型コロナウイルス感染症が広がる以前から、日本の経済は全体的に活性化できないと考えていました。その理由を記したいと思います。
突然ですが読者に質問です。下記の質問の空欄に数字を入れてください。「平均年齢」を聞いています。「平均寿命」ではありません。
回答は、本稿の最後に記しています(国立社会保障・人口問題研究所の資料を活用しています)。1960年代から1980年代にかけて、日本人の平均年齢は20歳代後半から30歳代前半でした。議論を単純化すると、当時の日本人の多くが若くて元気であり、勝手に活性化する状態だったと言えます。すなわち国等の政策で地域経済が活性化したわけではなく、全体的に日本が若かったため活性化していたと考えられます。
読者が20歳代や30歳代前半だった時を思い出してください。多少の徹夜は大丈夫だったのではないでしょうか。ただ単に「若い」というだけで、希望(未来)にあふれていたはずです。筆者の20歳代は、今でいうブラック企業に勤務していました(その企業の関係者の方々、すみません)。しかしブラックとは思わず(そもそも「ブラック」という概念がなかった)、徹夜もなんのそのという感じで仕事に邁進していました。
しかし筆者は年齢を重ねるとともに、体力が低下し、多くの現実にぶつかり、乗り切れずに、なかなか希望(未来)が見えなくなりつつあります(筆者はアラフィフです)。加齢とともに、活性力が失われていく読者もいるのではないでしょうか。
2010年時点の平均年齢は45・0歳です。45・0歳の大人が「今夜もオール(徹夜)だぜ!」と活性化していたら、それは「おかしい」と思います。おかしいを通り越して「異常」と言えるでしょう。辞書で初老の意味を調べると「①老境に入りかけの人。老化を自覚するようになる年頃。② 40歳の異称」とあります。つまり40歳は初老なのです。
また、40歳半ばは更年期前世代と言われます。体調不調が顕著にあられてきます。筆者も40歳半ばを過ぎたころに飛蚊症しょうが始まり、石灰沈着性腱板炎により右肩に激痛が走り、そして血を吐いたり(十二指腸潰瘍)しました。その40歳代半ばの初老が20歳代後半や30歳代前半の若者のように「活性化」することはあり得ません。
総体的に日本人が老いてきているため、従前のような地域経済の活性化は、現実的には難しいと考えます。その意味で、これから考えなくてはいけないのは、過去のような地域経済の活性化ではありません。これからの時代(老いる日本)に合致した新しい「地域経済の活性化」という定義が求められます。地域経済の活性化の新定義が必要です。
しかしながら、現在の地方創生は、過去の地域経済の活性化の定義に縛られています。そのため多くの地域に矛盾が生じつつあります。ちなみに、国立社会保障人口問題研究所は、2020年の平均年齢を48・2歳とし、2030年は50・6歳と予測しています(予測は、出生中位、死亡中位を仮定としています)。
これからは新しい地域経済の活性化の定義が求められてきます。本稿の読者の多くは「地方議会人」であると思います。地方議会人である政治家に、地域経済の活性化の新しい概念(価値観)を提起してほしいと思います。希望(未来)ある新しい姿(概念)を提示するのが政治の役割でもあります。