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Web版 教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」 第4回

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住民とつながる②

1 議会報告会の復活

⑴議会報告会の衝撃とその後

 いまでこそ、多くの議会で行われている議会報告会ですが、最初の頃はたいへん衝撃的でした。敷居が高いと思われてきた議会が、議場を離れて地域に出てきてくれる。しかも、住民に議会の活動を説明してくれるのです。議員が支持者に向けて「議会報告会」を開くことはよくあっても、議会として住民に説明するスタイルは初めてです。「めずらしいもの」みたさも手伝って、多くの住民を集めたものでした。

 ところが、数回、開催をしてみると、参加者はどんどん減ってゆき、目立つのは会場のイスばかりという議会もあります。ある議員から「出席住民が議員の数を下回ったときが辞め時だと思っている」と悲しい告白を受けたこともあります。こんな悲しい事態になる前に、本来の趣旨に立ち戻り、議会報告会を復活させたいものです。議会報告会の規定は、議会基本条例のなかでは、たいがい「議会と住民との関係」の章のなかに置かれています。制定時の栗山町議会基本条例でも、「議会の説明責任」を果たす場であると同時に、「町民の意見を聴取」する役割が規定されています。


〇栗山町議会基本条例

(制定時)

第4条

1〜6略

7 議会は、前6項の規定に関する実効性を高める方策として、全議員の出席のもとに町民に対する議会報告会を少なくとも年1回開催して、議会の説明責任を果たすとともに、これらの事項に関して町民の意見を聴取して議会運営の改善を図るものとする。


 今となっては「報告会」といった名前が悪かったのかもしれません。議会の活動を報告することが議会報告会の一番の役割だと思い込んでいる議会もあるようですが、住民の意見を議会として吸収して行政監視や政策立案の起点にすることが求められているのです。近頃は、議会基本条例での規定のされ方も少し変わってきています。


〇板橋区議会議会基本条例

(議会報告会)

第12条

議会は、区民に議会活動の状況を直接に報告し、及び説明し、並びに区政に関する情報を提供するとともに、区民の意見及び要望を聴取することにより議会による政策立案及び政策提言の充実を図るため、特段の事情がある場合を除き、毎年1回以上、議会報告会を開催するものとする。

2 略


⑵議会報告会を生き返らせるために必要なこと

今時の議会報告会の役割を踏まえて、議会報告会を生き返らせるための六つのチェックリストを書き出してみました(表1)。


表1 議会報告会を復活させるためのチェックリスト

① 「報告」ばかりでない

② 「これからのこと」、「地域で関心が高いこと」をテーマに加えている?

③ 事務局職員が運営していない

④ 特定の住民の長説法を許していない

⑤ 報告者(議員)とフロアー(住民)の対立関係になっていない?

⑥ 議会報告会の報告は行っている


・「報告」ばかりでない

 ほとんどの時間を議会からの報告に費やしている議会があります。しかも、挨拶がたくさん続く議会報告会。住民からすれば、もう、2度と行きたくありません。住民からの意見聴取をメインにしてみてはどうでしょう。報告も、意見聴取のための前提としての説明という形でするのが自然かもしれません。

・「これからのこと」、「地域で関心が高いこと」をテーマに加えている

 住民の関心は過去ではなく「これからのこと」です。また、意見を聴かせて欲しいといわれても漠然としたテーマでは話しにくいものです。具体的にテーマを絞り、たとえば、「中央図書館の指定管理について」とか「ごみの有料化の検討について」など、地域の住民の関心が高い事項をテーマにするのはどうでしょう。それが今後、議会で議論されるなら、住民は積極的に参加してくれるはずです。また、議会報告会というと、参加者が高齢の男性に偏りやすいものです。たまには、参加してほしい層を絞って、「子育てのまち実現化計画」などのテーマでの開催もいいかもしれません。

・事務局職員が運営していない

 「 無事に終わること」。事務局職員にとってはそれが一番大事です。ですから、事務局に任せると「おもしろみのない」運営になるのはしょうがありません。議会の意思で行うのが議会報告会です。ですから、議会報告会の企画や運営は議員がするべきです。そうでなければ、住民へのアピールもできません。

・特定の住民の長説法を許していない

 これは次の問題とも絡むのですが、住民のなかには当然、「この機会に自分の意見をいいたい」という方がいます。思いが強い分、話がとめどなく長くなりがちです。そうした住民の意見を議会として聞くことは必要かもしれせんが、議会報告会で聞くことになると、他の住民は「しらけて」しまいます。最初に発言は3分までなどとかルールを決めて、それを過ぎると、チンとベルをならしたりする必要があるように思います。無理に遮るのではなく、うまく笑いを入れたりしつつ話を終えることができると理想的です。こうしたことは議員の方が圧倒的に上手です。まさに人間力のなせる業です。そうした意味でも運営は断然、議員に任せるべきです。

・報告者(議員)とフロアー(住民)の対立関係になっていない?

 特定の住民の長説法は、壇上に議員、フロアーに住民という会場の構成にも問題があるかもしれません。報告の部分は仕方がないかもしれませんが、その後は少人数の同じテーブルに議員が住民と座って話をしたり、テーブルのメンバーの一部を変えつつ、いろいろな議員と住民が話せるくふうをしたいです。ワールドカフェ方式など、こうした方法をとりつつも意見をまとめることができる会議方式もあります。

・議会報告会の報告はしている

議会のウェブサイト上でも、議会だよりでも、次の議会報告会でもいいです。必ず、議会報告会でどんな気付きがあり、議会としてどう対応したかの報告を入れましょう。執行部の反応なども付け加えるとさらにいいでしょう。

詳細は地方議会人8月号で解説していきます。

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Web版教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」バックナンバー

連載第1回 議会基本条例をめぐる状況①
連載第2回 議会基本条例をめぐる状況②
連載第3回 住民とつながる①
連載第4回 住民とつながる②
連載第5回 議決責任など
連載第6回 一問一答方式の導入と反問権
連載第7回 行政監視から政策提案へ①
連載第8回 行政監視から政策提案へ②- 政務活動費を生かす
連載第9回   行政監視から政策提案へ③ 政務活動費を生かす2
連載第10回 行政監視から政策提案へ④
連載第11回 信頼できる議会を目指して①  議事機関としての議会
連載第12回 信頼できる議会を目指して②  住民とともに歩む議会
連載第13回 会議規則の整備①
連載第14回 会議規則の整備②
連載第15回 傍聴規則の整備

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