第14回 人口減少の時代に地方創生をどう進めるか?
本連載は「地方創生を実現するために、地方議会議員は具体的に何をすればよいのか?」、また「地方創生を実践するガイド」という2つの視点を持ちます。
第1期の地方創生を振り返り、第2期の地方創生を成功の軌道に乗せるためのヒントをもとに、読者の皆さんは本連載で示すヒントを深化・進化させていただき、議会での質問や提言に活用していただけると幸いです。
2021年6月25日に、総務省は2020年国勢調査の人口速報値を公表しました。日本の人口は1億2622万7000人となり、2015年と比較し、86万8000人減少しました。国連推計によると、メキシコに抜かれ、日本は世界で第11位となりました。上位10位圏外になるのは、1950年以降で初めてです。
同速報値によると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川) に加え、愛知、滋賀、大阪、福岡、沖縄の計9都府県は人口を増加させています。一方で38 道府県は人口規模を縮小しました。100万人を下回った県は10団体に増加しています。全体の8割以上の市町村でも人口が減少しています。さらに半数を超える市町村の減少率は5%以上となっています(毎年1%減少することを意味しています)。
外国人の流入などにより、一部の自治体では人口の維持や減少速度の逓減など、いい数字が見られます。しかし、全体的には人口減少の色合いは濃くなっています。 本連載は、地方創生を
①人口減少の克服
②地域の活性化
という2点に限定しています。そして様々な観点から考察を進めてきました。同速報値によって、人口減少の克服が極めて難しいことがわかります。特に条件不利地の自治体は、人口の維持さえも現実的に難しくなっています。その意味では、人口減少を克服するのではなく、「人口減少といかに共存していくか」が問われています。
「人口減少と共存していく」視点として、「コンパクトシティ」や「関係人口」があります。今回は、それらの概念を紹介します。
1.コンパクトシティという視点
コンパクトシティは一定地域に人口を集中させ、都市機能を充実させる取組みであり、人口減少に対応したまちづくりと言えます。
コンパクトシティを初めて実施したのは、青森市です※1。1989年に佐々木誠造・青森市長(当時)は、選挙公約として「コンパクトシティ」という概念を使用しました。その背景には、中心市街地から郊外への公的機関・商業施設の移転と人口の流出、豪雪地域のため市域の拡大は大幅な除雪費の拡大など事情がありました※2。
1992年にモントリオールで開催された北方都市会議において佐々木氏は「青森市はすでに社会資本が整備されている旧市街地に人々が戻り住む『コンパクトシティ』をまちづくりのコンセプトにしている」と発言しています※3。
佐々木氏はコンパクトシティを政策の重要な柱としていました。そして1995年「コンパクトシティ構想」を行政計画として明確に位置付け、積極的に取り組んでいくことになります※4。
コンパクトシティの定義
青森市はホームページに「住まい、職場、学校、病院、遊び場などさまざまな『機能』を、都市の中心部にコンパクトに集めることで、自動車に頼らず、歩いて生活することのできるまちのことです」とコンパクトシティの定義を記しています※5。
国土交通省がまとめた国土整備計画『国土のグランドデザイン2050〜対流促進型国土の形成〜』では、コンパクトシティを「都市機能や居住機能を都市の中心部等に誘導し、再整備を図るとともに、これと連携した公共交通ネットワークの再構築を図る」と明記しています。そのほか定義は多々あります(図表1)。そのため内閣府は、「コンパクトシティの概念や目的については、現状では、必ずしも万人共通の理解として定まったものはないように見受けられる」と指摘しています※6。
筆者は、各自治体の定義を参考にしつつ、コンパクトシティを「空間的に小さく、都市機能が充実している地域」と捉えています。なお、国土交通省の『国土交通白書 2014』では「実際のコンパクトシティにはいくつかの類型があり、『多極ネットワーク型』、『串と団子型』、『あじさい型』といったパターンがある」と記しています(図表2)。各自治体の取組みを確認すると、人口減少に対応していくことが根底にあると理解できます。
【注】
※1 佐々木誠造(2013)『まちづくり人づくり意識づくり―佐々木誠造に聞く「都市経営」』泰斗舎 同書の中で、佐々木氏はまちづくりの理念として「コンパクトシティ」を打ち出したのは自分がおそらく初めてだ、と述べています。
※2 櫛くし引びき素もと夫お(2016)「コンパクトシティ政策と郊外の空き家問題―青森市の事例からの論点整理―」『青森大学付属総合研究所紀要』
※3 山本恭きょう逸いつ(2006)『コンパクトシティ―青森市の挑戦』ぎょうせい
※4 コンパクトシティの詳細は、次の文献を参照してください。 牧瀬稔(2019)「地方自治体におけるコンパクトシティの歴史と現状」関東学院大学法学会『関東学院法学28(2)』31︱58頁
※5 次のURLを参照されたい(2021年7月10日アクセス)。
http://www.thr.mlit.go.jp/syourai/t3-26.pdf
※6 内閣府(2012)『地域の経済2012―集積を活かした地域づくり―』
詳細は地方議会人8月号で解説していきます。