行政監視から政策提案へ②-政務活動費を生かす
1 政務活動費を巡る状況
政務活動費の不正に関するニュースが後を絶ちません。一部の心ない議員が起こした事件であることは確かですが、これだけ続くと、心ない議員がたくさんいることも事実のようです。悔しいのは、政務活動費を厳正に使用している議員にまで不審の目が向けられることです。こんなことで議会と住民との溝が深まることはとても耐えられません。
ただ、政務調査費の額が少ない場合には不正につながることはまれです。不正は使い切れなかった政務活動費をどう「処理するか」という過程で生まれやすいものだからです。町村議会実態調査結果の概要(平成28年7月1日現在)によると、町村で政務活動費に関する条例を制定しているのは194町村( 20・9%)であり、その平均月額も9541円にしか過ぎません。
また、全国市議会議長会の調査によると、政務活動費の制度がある全国の市のうち、その額がもっとも多いのは月額1万以上2万円未満のゾーンだそうです。こうした議会では、書籍の購入や研修費用、はたまた会派での視察などの費用さえ満たすことはできないかもしれません。
政務活動費は、一定の人口規模以上の自治体で月額が急に上がるという特徴があります。ひと昔前に比べてずいぶんと減りましたが、それでも政令指定都市や都道府県では月額10万円を超えるのが普通です(東京都議会のように月額50万円というところもあります)。調査の範囲が広くなるということだからでしょうが、ルーズな支給も比較的潤沢な政務活動費が交付されている自治体議会で生じやすい傾向にあります。
政務活動費の前身は政務調査費でした。さらに昔は会派への交付金(補助金)でした。政務調査費に切り替わった当初は、旧時代のルーズな使い方の記憶が不正の土壌となっているのではないかと考えていました。しかし、どうも、そればかりではないようです。政務調査費となってすでに15年、それでも「残念な議員」は一定数、存在します。
これ以上の無用な批判を避けるためには、「残念な議員」が生じることを前提に、政務活動費のしくみを構築する必要がありそうです。これまで厳正に使用してきた議員や小規模自治体の議員にとっては、益々、政務活動費の使い勝手が悪くなることに戸惑いや憤りがあるかもしれません。しかし、事態がここに至ってはやむを得ない面があります。
2 政務活動費に関する規定
政務活動費には交付の根拠となる条例が必要です(地方自治法100条14項)。さらに、議会基本条例でも政務活動費について規定しているのが普通です。他の規定ほどはバリエーションがなく、次の兵庫県議会基本条例のように、①政務活動費を政策研究などの本来の目的のために使うこと、②使途を住民に明らかにすることをポイントとして規定しているものが多いようです。
〇兵庫県議会基本条例
(政務活動費)
第15条
政務活動費は、議員の責務及び役割の遂行に必要な調査研究その他の活動に資するため、これを交付するものとする。
2 政務活動費の交付を受けたものは、政務活動費を交付の目的に沿って適正に使用するとともに、その使途を明らかにしなければならない。
そもそも、地方自治法では、条例で「政務活動費を充てることができる経費の範囲」を定めることを規定しています。また、収支報告書の提出を義務付け(第100条15項)、議長に「使途の透明性の確保に努める」ことも求めています(同条第16項)。地方自治法で定められたことはどの議会も守らなければならないわけですから、議会基本条例では、それ以上の、適正使用のための措置と透明性確保のためのしくみを構築することを求めていると理解できます。
〇地方自治法
第100条 ①〜⑬略
?普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で
定めなければならない。
⑮・⑯ 略