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Web版 教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」 第9回

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行政監視から行政提案へ③政務活動費を生かす2

1 100条16項の意味

 (1)透明性確保の裏にあるもの引き続き政務活動費についてです。

 前号では、政務活動費の適正使用のために、使途基準や手引きなどをしっかり議論して整備すべきことをお話ししました。

 今月は、そのほかの適正使用のために議会ができることを考えてみます。

 地方自治法100条16項には「議長は、第14項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする」とあります。これは政務調査費が政務活動費に改正された際に加えられた規定です。問題はこの意味です。

 議長は文字どおり、「使途の透明性を高める努力をすればいいんじゃないか」と思うかもしれません。ただ、それだけでは不十分です。なるほど、政務活動費は補助金としての性格があるといいます。たとえ、そうでなくとも、議会には予算執行権がありませんので、政務活動費を交付するのは首長ということになります。首長は、交付決定をし、会計管理者に支出命令を出します。普通なら、その過程で法令に反するものではないかどうかチェックが丹念にされるはずです。しかし、政務活動費の場合には、議会のことに習熟していないでしょうし、何より、議会の自律性を尊重しなければなりません。

 明らかな法令違反がある場合にはともかく、執行部側のチェック力はどうしても落ちます。それを踏まえて、100条16項があるのです。「議長はただ使途の透明性の確保さえすればいい」という理解はとてもとれません。当然、透明性の確保のための措置をとるためには、その前提として、政務活動費の使途や関係書類が適正なものであることを確認しなければなりません。そして、それは100条16項から導かれる議長の役割でもあるのです。「書類を見ないで決済のハンコをつく」。やる気のない上司にありがちですが、議長はそんな存在になってはいけないのです。

⑵100条16項を担保する条例上のくふう

 ただ、使途が適正かどうかチェックをする直接的な権限が地方自治法上には規定されていないのも事実です。議長の事務統理権(地方自治法104条)に含まれるといえますが、協力的でない議員や会派のなかには「ハッキリ書かれていないから」と調査拒否をする事例もあるでしょう。そこで議会基本条例などに「ひとくふう」する議会が多いのです。その「ひとくふう」とは、①まず、議会基本条例で政務活動費の交付を受けた者に透明性を確保することを義務付けます。②次に、政務活動費交付条例で議長が説明を求めることや、是正命令を発することができるものとします。「是正命令」の前に「是正勧告」できるようにしておくのもいいでしょう。


〇大津市議会基本条例

(政務活動費)

第12条 

政務活動費の交付を受けた会派は、使途の透明性を確保した上で、政務活動費を有効に活用して調査研究を行い、議会活動の充実及び強化に努めなければならない。

2 略

〇大津市議会政務活動費交付条例

(是正命令等)

第7条議長は、必要に応じ、会派に対し、政務活動費の支出の状況について説明又は書類等の提出を求めることができる。

2 議長は、政務活動費の交付を受けた会派が、前2条の規定に違反していると認めたときは、当該会派に対し、期限を定めて、その違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。


 こうした調査は議長の名の下に議会事務局が行うことになります。条例の根拠があれば、議員や会派も協力しなければなりません。また、「是正命令など出されたらたまらない」と早めに改善もしてくれるというものです。

 詳細は地方議会人1月号で解説していきます。

→地方議会人1月号の詳細はコチラをクリック願います

Web版教養講座「議会基本条例を議会に活かす・住民に活かす」バックナンバー

連載第1回 議会基本条例をめぐる状況①
連載第2回 議会基本条例をめぐる状況②
連載第3回 住民とつながる①
連載第4回 住民とつながる②
連載第5回 議決責任など
連載第6回 一問一答方式の導入と反問権
連載第7回 行政監視から政策提案へ①
連載第8回 行政監視から政策提案へ②- 政務活動費を生かす
連載第9回   行政監視から政策提案へ③ 政務活動費を生かす2
連載第10回 行政監視から政策提案へ④
連載第11回 信頼できる議会を目指して①  議事機関としての議会
連載第12回 信頼できる議会を目指して②  住民とともに歩む議会
連載第13回 会議規則の整備①
連載第14回 会議規則の整備②
連載第15回 傍聴規則の整備

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