ー信頼できる議会を目指して① 議事機関としての議会
(1)唄を忘れた金糸雀(カナリヤ)
連載を続けてきましたが、そろそろまとめの時期がきました。これまで具体的な規定をとっかかりにして少し細かい話をしてきましたので、今月と来月は、大きな視点で議会基本条例のことをお話ししようと思います。
西條八十氏が作詞した古い唱歌に「唄を忘れ金糸雀(カナリヤ)」という曲があります。「唄を忘れた金糸雀(カナリヤ)は、後(うしろ)の山に棄てましょかいえいえ、それはなりませぬ」と始まるあの歌です。そのあとも、唄を忘れたカナリヤを様々な形で罰しようと考えては踏みとどまる歌詞が続きます。しかし、最後は「象牙(ぞうげ)の船に銀の櫂(かい)月夜の海に浮かべれば、忘れた唄をおもいだす」で終わります。
この歌、自治体議会に対する住民の思いのようです。いろいろな事件もあり、住民の福祉の増進という「唄」を忘れた議会も見受けられます。しかし、住民が議会を「捨ててしまう」ことはできません。議員は紛れもなく自分たちの代表であり、誰かがその役割を果たさなければならないからです。
そんななか各地で制定が進んだのが議会基本条例です。制定した議会の現実と条例の理念との間には開きがあるかもしれません。住民からすれば「カッコつけて条例なんか定めて」と思うかもしれません。しかし、その理念を追うなかで「唄」を思い出す議会もきっとあるはずです。また、そうならなければなりません。
(2)自治体議会の特徴
議会におじゃますると「二元代表制の一翼を担う議会として」という言葉をよく聞きます。もちろん、その意味を理解している議会もありますが、なかには、執行部にも、住民にも「議会の俺様宣言」としてしか聞こえない場合があります。
古い地方自治の教科書には地方自治の特徴として「首長制」という言葉が出てきます。案外、この言葉の方が正しく自治体の特徴を示しているかもしれません。自治体のシステムのなかで、国と大きく違うところは、首長も住民が選んだ存在だということです。
国では、行政権は内閣に属しますが、その首長である内閣総理大臣を直接、国民は選んでいません。しかも、内閣は合議体であるのに対して、自治体の首長は1人です。さらにいえば、議院内閣制をとっているわけではありませんから、政党(会派)の影響力も限られます。ということは…、自治体の首長はたいへん大きな力をふるうことができる存在なのです。
自治体には執行機関が複数あります。首長だけでなく、教育行政については教育委員会、警察行政については都道府県の公安委員会が執行機関であるようにです。ほかに、人事委員会(公平委員会)や監査委員などもあります。このように執行機関をいくつも作ったことも、選挙で選ばれる強い首長が独裁者にならないためのものです。実際にそうした市町村長や知事がいるかどうかは別にして、選挙に勝てる支持者さえ押さえることができれば、少数者の意見など聴かなくても「痛くも痒くもない」という状況を作り出すことができます。執行部側で行われるパブリックコメントが意見を聴いたというアリバイ作りのためだけに行われやすいのも、こうしたことが原因です。